放射性物質を含む土と生きてゆくこと-信濃卓郎先生インタビュー記事2020④
再生土壌とは、回収されていた剥ぎ取り土壌を再び活用するものです。再生土壌は前例のない試みで、あまりにも量が多く管理が困難な除去土壌を少しでも減らそうとする狙いがあるようです。除去土壌の放射線量を下げる方法はいくつかありますが、コストや効率の面から、現在は放射線量が低い土をより分ける方法が採られています。
農地土壌の表面の土は長い年月をかけて丹念に育まれた非常に上等な土であり、除去された土壌は放射性物質を含んでさえいなければ農家の方々には垂涎の的です。表面の土壌が剥ぎ取られた後の農地には、代わりに真砂土と呼ばれる土が投入されましたが、もとの土壌とは比べ物にならないほど貧栄養で肥沃度の低い土です。肥料などを入れればとりあえず収穫はできるものの、これまで一生懸命土を育ててきた農家の方々にとってはとても満足のいくものではないようです。
再生土壌の活用についてはやはり拒否反応も強く、中々同意が得られないようです。放射性物質を含んでいる点は大きなデメリットですが、飯館村長泥地区の住民は勉強会を重ね、分別されて低い放射線量を示す良質な土壌を再び農業に用いることに積極的な姿勢を示しています。長泥地区では現在既に再生土壌を用いた栽培試験が開始されています。
長泥地区でも最初から認められたわけではありません。行政と研究者が熱心に地元の人々と対話を続けてゆくうちに、次第に前向きに捉えられていくようになりました。再生土壌の活用の取り組みを一概に行政の都合で進められていると見なす向きもあるようですが、再生土壌の活用はその地域に生きる人々にとってよりよいあり方を真剣に模索する中でとりうる現実的な対応策の一つです。